Real Voiceエンジニアの声
フリーランスとして「成長の限界」を感じた時、
一緒に考え、突破口を見つけてくれた
片岡大地さん
Introduction
フリーランスのエンジニアになって5年。29歳を迎えた時に、エンジニアとしての「成長の壁」に直面したのが片岡大地さんです。
「リスクを取って新しいことに挑戦できない」「情報のアンテナが狭くなってしまう」という状況に危機感を覚え、「キャリアの曲がり角」にいることを意識した片岡さんは、どうやってその危機を脱したのでしょうか。また、その後のキャリアはどう変わったのでしょうか——。話をお聞きしました。
どんなきっかけでエンジニアになろうと思ったのですか?
片岡さん: 中学時代、これから進路をどうしようかと考えた時に、「きっとこれからはITの時代だ」と感じて、情報技術科がある高校に進学しました。
当時は、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)やAdobe Flashを使ったリッチなWebサイトが登場し始めた頃で、子供心に「これからはITなしには仕事をやっていけないだろう」と思ったんです。
当時、PCや携帯電話を使いこなしている人と、そうでない人とでは、得られる情報の速さも量も、圧倒的に差が出てくることを実感して、「こんなにも住む世界が変わってしまうのか」と驚いたのを覚えています。
プログラミングは、進学した高校で学びました。自分に合っていたようで、勉強もサクサク進んで楽しかったですね。「これは自分に向いている」と思って、エンジニアになろうと決めました。
高校を卒業して、最初に就職したのはSESの会社でした。そこでCakePHPのフレームワークを使って開発をしていたのですが、あまり相性が良くなくて……。別の会社を探していた時、たまたま派遣された先の会社がすごく自分に合っていたんです。
「うちの会社に来ませんか」と言われて、そこで働き始めたところ、その会社が当時は珍しく副業を認めていたんですね。一つの会社のことだけではなく、さまざまな会社のことを知っておいた方がいいだろう、と思って、平日の就業時間中はメインの会社で働いて、就業時間後や土日に副業をするようになりました。
そんな働き方をしているうちに、「フリーランスになって、メインとサブの仕事を受けても同じじゃないか」と思い始めたんです。フリーランスでも自分で案件を取ってくることができるか、納品までをきちんとやり切ることができるか——という、腕試しのような気持ちもあって、思い切ってフリーランスのエンジニアとして働いてみることに決めました。これが働き始めて6年たった、24歳の時のことでした。
それからさらに5年たった29歳の時、フリーランスのエンジニアとして働くことに不安を覚えるようになったのですね。
片岡さん: そうですね。もちろん、フリーランスにもいい面がいろいろあるのですが、5年経ってみて課題も見えてきました。
例えば、会社に所属していると、たとえスキルがなかったとしても「仕事で必要だから」ということになれば、無理にでも勉強することになるので、それがエンジニアとしての成長につながります。
これがフリーランスになると、“スキルに不安がある仕事を受けると、失敗した時のリスクが大きい”ことから、どうしても「自分ができる範囲の仕事」を選びがちになるんです。そうなると、仕事を通じた成長が難しくなってくるのです。成長のためには、自分で学びの時間をつくることが大事なのですが、なかなかその時間も取れなくて……。「このまま安全な仕事を選び続けていたら、エンジニアとしての成長が止まってしまう」という危機感がありました。
もう一つは情報の入口が狭くなりがちなことです。会社にいた時は、周りの人がいろいろな情報を持ってきて共有してくれるので、自分のアンテナが向いていない情報も自然に入ってきて、ある意味、それが刺激になるようなこともあるんです。これがフリーランスになると、一人の時間が多いので、ともすると自分が気になる情報ばかりを集めてしまうんです。
自分が意識しないと成長が止まる、ということは、いつ頃、気がついたのですか?
片岡さん: フリーランスになって2年くらい経った頃ですね。当時はRuby on Railsを触っていたのですが、ふとしたときに、他のプログラミング言語を使った仕事をしていないことに気づいたんです。このままではよくないと思って、技術ブログを書いたり、オープンソースの活動をしたりしようと思ったのですが、なかなか長続きしなくて……。
ほかにも、Shibuya.rbという渋谷のRuby勉強会に行ったり、エンジニア仲間に「最近、面白いサービスとか技術の話ない?」と声をかけて情報収集したりしましたが、なかなか「エンジニアとしての武器」が育っていかないことが分かってきたんです。自分一人で成長していくのは難しいと実感しました。
そんなことを考えているうちに、受注していた案件がコロナの影響で止まってしまったので、新しい案件を探すために、初めてエージェントの方と話してみることにしました。
これまでも、エージェントについて調べてはいたものの、実際に話をするには至らなかったとお聞きしました。それはどうしてですか?
片岡さん: 不動産の仲介業者さんに似ているな、と思ったんですよね。
「あなたのために家を探しますよ」と、言ってはくれるのですが、実際は早く契約してもらいたいし、契約が終わったら関係はそこで終わり。あとは保険会社かオーナーさんと話してください——といった感じに似ていて……。自分で仕事が取れていたこともあって、実際にお話しするところまでいかなかったんです。
コードクライマーの内田さんとの出会いは、エージェントを使うのがあまり好きではない知人からの紹介だったんです。「唯一、信頼して紹介できる人だから」と勧められたので、お会いすることにしました。
話をお聞きしたところ、「企業と契約して終わり」ではなく、「契約の締結が、エージェントとエンジニアとの関係構築のスタート地点」だったり、仲介手数料をオープンにしていたり——といった点が「ビジネスモデルとして面白い」と思いました。普通のエージェントとは違う、新しいタイプのサービスが出てきた、という感じで好奇心がくすぐられました。
スタートアップ専門の紹介サービスというところも、僕にとってはポイントが高かったですね。これまで、ずっとスタートアップで働いてきて、これからもスタートアップで仕事をしたいと思っていたので、この市場に詳しいというのは心強かったです。
内田: スタートアップとひとことでいっても、会社によって文化はさまざまですし、事業をスケールさせようと懸命になりすぎて「やりがい搾取に近い状態」になってしまう会社もあれば、事業は順調でもエンジニアにとって稼働環境がよくない会社もあるなど「不確定要素」が多い。しかも事業フェーズによっては状況も頻繁に変わったりするので、リアルタイムで最新情報を把握したり、相性を見極めるのは難しいんです。スタートアップ専業だからこそ、会社のことから技術トレンドまで細かく把握できている、というのはあると思います。
「キャリアの曲がり角」に悩む片岡さんの履歴を見て、コードクライマーとしてどんな支援ができると考えましたか?
内田: 片岡さんは、バックエンドからフロント、インフラまでを、複数のスタートアップで幅広く開発してきた経験があるので、実装者としての実績は申し分ありませんでした。
しかし、即戦力として優秀である一方、この延長線上で仕事を続けていたら、どれだけ長い期間働いていても時間の切り売りになってしまい、大きな成長につながらないかもしれない、とも思いました。
当時片岡さんは29歳で、正社員であればTL(テックリード)・EM(エンジニアリングマネージャー)など責任あるポジションを経験する人も出てくるタイミングでした。正社員だとこの時期には、実装レイヤーだけでなく、広く設計に携わる機会も増えてきます。
片岡さんが今後、エンジニアとして市場価値を高め続けていくためには、よりビジネスに近く、裁量を持てる環境の中で「事業と向き合う経験」が必要になります。
ただ、フリーランスのエンジニアにここまで任せてくれる企業は少ないのが実情です。そこをなんとか見つけられたら、という思いはありました。
それを聞いて片岡さんはどう思いましたか?
片岡: たしかに、これから報酬を上げていこうとすると、会社から求められるのはリーダーとしての役割だったり、エンジニアのスペシャリストだったりと、今より一段上の役割を果たせるようになる必要があります。その意味では、内田さんの履歴書の読み解きは自分の考えと一致していたので驚きました。
自分が目指すのがスペシャリストか管理職かと考えると、管理職に興味があったので、マネジメントやチーム作りなどの経験が積める会社があれば、と、内田さんにはリクエストしました。
内田: 職務経歴書をみると、TLに近い役割は経験しているのですが、それを正式な実績と書けるほどではなかったので、ご本人の希望とも照らして、ゆくゆくはEMとしても経験が積める現場がいいと考えました。
フリーランスのエンジニアに一定の裁量を与えてくれるという意味で、片岡さんに合う会社を探すのは難しかったのですが、急成長中の医療系スタートアップが求めている人材と片岡さんの経験・人柄がマッチしたので、ご紹介しました。
資金調達をしたばかりで、当時、正社員のエンジニアが1人のところからエンジニア組織を立ち上げようとしていたので、まさに片岡さんにぴったりの案件でした。これまでのエンジニアとしての経験も生かせるし、これまでより大きなフィールドで新たな経験ができると思ったのです。
内田さんのオファーを聞いて、どう思いましたか?
片岡: この会社に入ったら、どんなポジションでどんな働き方になるだろう、ということを内田さんが説明してくれたのですが、それを聞いて自分が成長できると実感できました。特に、エンジニア組織の立ち上げは、ぜひやってみたいと思いましたね。なかなかこのような機会には立ち会えないので、貴重な経験になると思いました。
実際、働き始めてからも、正社員のエンジニアの方から信頼して仕事を任せてもらっているので、とてもやりがいがあります。
「成長の曲がり角」の危機は回避できそうですか?
片岡: そう思います。フリーランスだとなかなか経験できなかったコードのレビューにも参加していますし、社内勉強会で新しい情報に触れられるのもありがたいですね。
組織の立ち上げという役割も担っているので、フリーランスでありながら、チームの一員として動けるのもいい経験になっています。「みんなで成長していこう」というムードがあるので、大変な中にも楽しさがありますね。
働きぶりが認められて、その後正社員として働き始めたそうですね。
片岡: エージェントからすれば、あまり好ましくないことだと思うのですが、内田さんは僕のキャリアのことを第一に考えて、納得して答えを出すまで待ってくれました。結局、正社員になることを選んだのですが、快く送り出してくれたのはうれしかったです。
内田: 本音を言えば、もう少し、長くフリーランスで働いてほしかったのですが、このタイミングで正式にコミットした方が、片岡さんに得られるものが多いだろうことは分かっていました。もし、このチャンスを逃すと、担ってきたポジションが他の人に奪われてしまい、これまで組織の立ち上げに貢献してきた対価を得られなくなる可能性もあります。
コードクライマーのミッションは、「エンジニアと企業の成長に貢献する」ことなので、新しい挑戦を祝して気持ちよく卒業、ということになりました。卒業しても関係が続くところがコードクライマーの特徴なので、これからも片岡さんとは情報交換をしていきながら、これまでとは違った形で成長を応援していきたいと思っています。
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