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クライアントの声

Client

MI-6株式会社

取締役 Co-founder

入江 満さま

入江 満

難しいエンジニア探しの条件に寄り添い、最適な人材が見つかるまで探し続けてくれた

    Introduction

    素材産業における研究開発のプロセスを、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって効率化する——。そんなミッションを掲げて2017年に創業したのがMI-6です。

    MI-6が支援するのは、電子素材や化学素材、電池、合金など、私たちの暮らしに欠かせない製品に使われる素材を開発する企業です。これまで素材開発の現場では、研究者たちの経験や勘が重要な役割を担ってきました。MI-6は、そうした職人技ともいえる知見を尊重しつつ、データ解析やAI技術といったインフォマティクスの力を融合させることで、新たな素材の開発をより効率的かつスピーディーに進められるよう支援しています。

    「スマートフォンやディスプレイなど、日常生活に欠かせない製品の内部には、日本の素材メーカーの技術が数多く使われています。日本が誇る素材産業・製造業を、DXの力でさらに進化させ、世界をリードし続ける産業にしたい」——。そう語るのは、MI-6 取締役 Co-founderの入江満氏です。

    そんな同社が直面したのが、エンジニア採用の壁でした。高い専門性を持つエンジニアであると同時に、ものづくりの研究開発分野への知見や関心も備えている——。そんな難しい条件を満たす人材を、MI-6はどのようにして採用してきたのでしょうか。入江氏に、その取り組みについて伺いました。

    特殊な業態ゆえの「エンジニア探しの課題」とは

    エンジニア採用についてどのような課題があったのでしょうか。

    入江さん:MI-6が直面していた採用課題は、「素材研究開発のDX」という、他に類を見ない事業領域に深く根ざしたものでした。一般的なスタートアップのように、「優秀なエンジニアを集めて、彼らが主導する組織をつくる」といったモデルがそのまま当てはまらない点が難しさの一因でした。

    当社のテックチームは、データサイエンティストや機械学習リサーチャー、機械学習エンジニア、SRE(サイトリライアビリティエンジニア)、Webエンジニア、プロダクトマネージャーといった多様な専門職で構成されています。そして、それぞれが素材研究の専門家や事業部門と連携しながらプロダクト開発を進めているのが特徴です。つまり、テックチームといってもエンジニアだけの組織ではなく、さらに「素材開発」「プロダクト開発」「AI」という三つの専門領域が重なり合っているため、採用のハードルは必然的に高くなってしまうのです。

    こうした独自性のあるビジネスであるがゆえに、創業当初のエンジニア採用には非常に苦労しました。特に最初のエンジニアには、技術スキルだけでなく、開発マネジメントや組織づくりの能力も求められました。ジョブディスクリプション(職務記述書)を書くことはできても、どんな人物像がフィットするかという「ペルソナ」を明確に描くのはとても難しかったことを今でもよく覚えています。

    一般的なエンジニア組織と比べると、組織の構造が複雑で、人間関係にも配慮が必要そうですね。

    入江さん:おっしゃる通りです。そうした組織構造ゆえに、私たちは候補者がMI-6のカルチャーに合っているかどうかも、非常に重視してきました。私たちは「科学」「協働」「共感」という三つの価値観を大切にしており、科学的なアプローチで課題解決に向き合い、多様な専門家と協働する姿勢を持ち、相手の立場に立って物事を前に進める共感力を持つ人材を求めていました。

    このように、事業内容の特殊性に加えて、組織構造やカルチャーフィットといった複数の要素が絡み合っているため、エンジニア採用が困難になっていたのです。

    難しい条件の下、2年間探し続けて最適なエンジニアを紹介

    MI-6とコードクライマーの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

    内田:MI-6代表の木嵜基博さんと、コードクライマーの株主である尾藤正人さんが知り合いだったことから、ご紹介いただいたのが最初の接点です。

    当時、MI-6さんでは、フロントエンド開発をリードしつつ、マネジメントやコードレビューも担えるエンジニアを探していらっしゃいました。ただ、研究開発支援という特殊な事業領域に加えて、カルチャーとの親和性や、ジョブディスクリプションの要件も満たす人材となると、なかなか条件に合うエンジニアが見つからなかったのです。

    そもそも、Webエンジニアで研究開発に関心がある人は数自体が少なく、またそういうエンジニアがいたとしても、研究開発に没頭するあまりコミュニケーションに関心がなかったりと、条件に合う人がなかなか見つからなかったのを覚えています。

    ただ、MI-6のビジネスは日本企業がグローバル展開する上で欠かせないものだと思ったことと、文化の面でとても良い印象を持っていたことから、条件にマッチするエンジニアが見つかれば必ずご紹介したい、という気持ちはずっと持ち続けていたんです。エージェントとしてエンジニアと面談するときにも、「この人はMI-6に合うかどうか」と、頭の隅で常に意識していました。

    そして出会いから約2年が経ったころ、ようやく条件に近いと感じるエンジニアと出会い、ご紹介させていただきました。

    そのエンジニアは、どのような方だったのでしょうか?

    内田:創薬分野におけるAI活用を目指し、大学院で学びながらフリーランスとして活動していた伊藤さんという方です。過去にはスタートアップで1人目のエンジニアとして参画していた経験があり、フロントエンドからバックエンド、インフラまで一通りこなすことができますし、開発だけでなくマネジメントや組織づくりにも対応できる力を持っていました。伊藤さんとは、AIの知見を将来どう活かしていくかについて相談を受けている中で、「この方はMI-6にフィットするかもしれない」と直感したのです。

    入江さんは伊藤さんと実際にお会いして、どんな印象を持ちましたか?

    入江:経歴、スキルの両面で、まさに私たちが求めていた人材でした。そして何より、カルチャーとの相性も非常に良く、第一印象から「この方だ」と感じました。2023年10月から業務委託として週3日勤務で参画していただいたのですが、実際の仕事ぶりを見て、期待以上の成果をあげてくださっていると実感しています。

    企業とエンジニアの「小さな期待値のズレ」を埋める方法とは

    MI-6が期待する役割と伊藤さんのやりたいことは、最初から一致していたのですか?

    内田:実は最初の段階では、両者の間に少しギャップがありました。当時のMI-6さんには、Web開発の経験が豊富なPMが少なく、プロダクト品質の観点やリリース前に必要なテストの要点などがチーム内で十分に共有されていない状況がありました。そこで、伊藤さんにはプロダクトマネージャー的な役割を担ってもらいたいという期待があったのです。Webエンジニアリングに精通しているだけでなく、大学院で機械学習も学んでいる伊藤さんは、開発とAIの橋渡しができる非常に魅力的な存在でした。

    一方で、伊藤さんご自身は、将来的に機械学習エンジニアとしてのキャリアを築きたいという意向があり、「このポジションで、本当に機械学習の実装やコーディングに関わる機会があるのか」という点を気にされていました。また、過去にプロダクトマネージャーとしての経験が豊富だったわけではなかったこともあり、その役割に対しては少し躊躇されていたようです。

    そのギャップをどのように埋めていったのですか?

    内田:入江さんが、MI-6として伊藤さんにどのような業務を任せたいと考えているのかを、非常に具体的に示してくださったことが大きかったと思います。その中に、伊藤さんが「やってみたい」と感じる案件が含まれていたことが決め手となり、最終的に前向きな気持ちでジョインすると決めてくれたのだと思います。両者で何度も話し合いを重ねながら、企業側の期待と伊藤さんの希望をすり合わせていったことが、うまくいった要因だったと感じています。

    伊藤さんはMI-6の企業文化にも強い共感を抱いていました。「全体集会で定期的に経営層の考えが共有され、会社の方向性が明確であること」や「社員一人ひとりのキャリアに真摯に向き合ってくれる姿勢」に魅力を感じ、「とても働きやすい環境だ」と話していました。

    とはいえ、伊藤さんにとっては、入江さんに直接言いづらいこともあったと思います。そうしたときには、私が間に入り、伊藤さんの思いや迷いを聞き取って入江さんに伝えるなど、必要なサポートを行っていました。

    コードクライマーでは、業務委託契約の成約後も、クライアント企業とエンジニアの双方に対して定期的に1on1を実施し、期待のズレが生まれないよう継続的に伴走支援をしています。

    実際、伊藤さんには一時期「Webエンジニアが組織の中でマイノリティであること」に悩む時期もありました。研究開発や機械学習が中心となっている組織の中で、Webエンジニアとしてどこまで必要とされ、どう評価されるのか——そうした不安を抱えていたのです。

    しかし、入江さんと伊藤さん、それぞれとの1on1を通じて、「MI-6のプロダクトをより良くしていくためにはWebの領域に明確な課題があり、伊藤さんがその課題解決に貢献できる」という共通理解が生まれました。私は伊藤さんに、「その領域を担っていくことでWebエンジニアとしての存在価値を高められるはずだから、自信を持って取り組んでいきましょう」と伝えたこともあります。

    入江さんは、組織全体のバランスを見ながら、テックチームのメンバーひとり一人が自信を持って働けるような環境づくりに力を尽くしてくださる方です。その姿勢が伊藤さんにも伝わり、最終的には「今はとても良い補完関係の中で仕事ができている」と話すようになりました。現在では、MI-6からの正式なオファーを受け、伊藤さんは正社員として活躍しています。

    「紹介は終わりではなく始まり」—MI-6が語るコードクライマーの価値と今後への期待

    今回のエンジニア紹介について、コードクライマーへの評価をお聞かせください。

    入江さん:契約が成立した後も、エンジニアに対して1on1で丁寧にフォローしてくれる点は、非常にありがたく感じています。このサポートは、私たち受け入れ側とエンジニアの間に生じがちな「期待のズレ」を埋めるうえで、とても重要な役割を果たしていると思います。

    というのも、どれだけ私たちが積極的にコミュニケーションを取ろうとしても、雇う側と雇われる側という立場の違いがある以上、どうしても心理的な壁が生まれ、本音を伝えづらい場面が出てきてしまいます。 

    そんなときに、コードクライマーの内田さんが、エンジニアとクライアント双方に対して1on1の場を設け、間に立って丁寧に橋渡しをしてくれたことで、相互理解が深まり、関係性がより良い方向に進んでいきました。これは、単なる紹介にとどまらず、長期的な信頼関係を築くうえでも価値のあるサポートだと感じています。

    もうひとつ印象的だったのが、紹介いただいたエンジニアのマッチング精度の高さです。私たちの事業は一般的なエンジニアリング企業とは少し異なるため、エージェント経由でご紹介いただく候補者は、どうしても応募サイトやリファラル経由に比べてコンバージョン率が下がりがちでした。

    そんな中で内田さんは、「広く浅く」候補者を募るのではなく、私たちのニーズや文化を深く理解したうえで、本当にフィットしそうな方を慎重に選んで紹介してくださいました。書類選考や面談にかかる時間的・人的コストを考えても、人数を増やすより、少数でも精度の高いご紹介をいただけることのほうが、私たちにとっては大きな価値があります。

    しかも内田さんは、2年前の面談でお伝えした私たちの条件をしっかりと記憶してくださっていて、それに合うエンジニアを長い時間をかけて探し続けてくれました。そうした姿勢からも、私たちにとって非常に心強いパートナーだと実感しています。

    コードクライマーには今後、どのようなことを期待していますか?

    入江さん:私たちの会社は、「素材をつくる」というものづくり産業の基盤を支える役割を担っており、そのため、社会への貢献意識が高いスタッフが多いのが特徴です。ただ、こうした志向を持ったエンジニアが集まるコミュニティは、実際にはなかなか見つかりません。

    社会課題に関心があり、ものづくりの基盤を支えたいと考えるようなエンジニアは、おそらくマイノリティかもしれませんが、だからこそ、共通の価値観を持つ人たちが集まれば、結束力の高いコミュニティになるはずです。そうしたつながりがあれば、次のキャリアを考える際にも、より精度の高いマッチングが実現できるのではないかと思っています。

    こうした取り組みは、大手の人材エージェントではなかなか難しいかもしれません。だからこそ、コードクライマーさんのような存在が、価値観や志向を軸にしたコミュニティづくりやエコシステムの形成を手がけてくれることに期待しています。

    コードクライマーはどんな企業に向いているエージェントなのでしょうか?

    内田:まさに今回ご一緒したMI-6さんのように、「働く人と真剣に向き合う姿勢を持つ企業」とは非常に相性が良いと感じています。私たちは、クライアント企業の志やビジョンに心から共感し、それに主体的に関わっていけるエンジニアを紹介することを目指しています。そのために、ときには数年単位で最適な人材を探し続けることもあります。

    ヒアリングでは、企業側からの要望をただ聞き取るだけでなく、その背景にある思いや、本質的な課題まで丁寧にくみ取るよう努めています。そうすることで、表面的な条件だけのマッチングではなく、クライアントとエンジニアの双方が「本当にこの出会いでよかった」と思えるような関係を築くことを目指しているのです。

    【撮影:永山昌克 執筆:後藤祥子】